【精神科】育児ノイローゼについて

Q育児ノイローゼってどんなものですか?

A誰でもなる可能性あり。要因の一つは「鉄不足」。

 ささいなことでイライラする、涙もろくなる、子どもがかわいいと思えない、などは育児ノイローゼと世間で言われる「産後うつ」の症状の一部です。精神科には、そんな鬱々とした気分を抱える子育てママが度々来院されますが、産後うつを訴えられた方の検査結果のほとんどが、血液中の鉄分不足です。鉄が不足すると、不安やうつを和らげる「セロトニン」や、やる気を起こす「ドーパミン」などの脳内の神経伝達物質が作られにくくなります。
 特に、セロトニンは精神の安定に深く関わっており、不足すると「うつ病」の他、あれこれ心配したり緊張する「不安障害」、突然動悸や息切れ、めまいなどの発作に襲われる「パニック障害」、確認や清潔へのこだわりが強くなる「強迫性障害」などの原因として知られています。

Q鉄分は妊娠中だけでなく産後も必要ですか?

A鉄の貯蓄が少なくなると疲れのピーク時うつに。

 妊娠中は意識して鉄分を摂っていても、産後は全く摂らなくなったという方を多く見かけます。ですが、血液中の「ヘモグロビン」の数値が正常でも、妊娠・出産・授乳によって「フェリチン」という鉄の貯金が減ると疲れやすく、またひどくなると産後うつの症状が現れることがあります。欧米人と比べ、初潮後の日本人女性の多くは鉄不足。特に、元々母乳育児の方やダイエットによる偏食をされていた方、スポーツが好きだった方はなおさらです。授乳中はもちろんですが、断乳後も閉経までは意識して摂取していきましょう。
 さらに、摂取するなら吸収の良い動物性の「ヘム鉄」を選ぶのがベスト。レバーなら一日330g程と言われますが、さすがに毎日そんな量は食べられませんよね。ですから、夕食などで赤身の肉を積極的に選ぶ以外に、サプリなども取り入れながら、コツコツ摂取していきましょう。お子さんのためにも、ママ自身の心も体も大切にしていきましょうね。

「子どものことを一番に考えてきたママ。自分の体にも鉄分を補給してあげれば、心の安定は徐々に取り戻せます。」

魚谷千草先生

精神科

医王ヶ丘病院

魚谷 千草 先生

金沢大学附属病院神経科精神科勤務後、現職。医学博士、精神保健指定医、日本医師会認定産業医。