【トピック】夏から秋にかけて流行する感染症について

ヘルパンギーナ

のどの奥の強い痛みが特徴

5~8月に流行する夏風邪で、「エンテロウイルス」が主な感染源。「高熱」のほか、のどの奥に水疱すいほう潰瘍かいようができて赤くはれ、強い痛みがある「咽頭炎いんとうえん」の症状が特徴的。特効薬はなく症状を和らげる治療のみ。のどの痛みで飲食ができないときは、点滴を行うことも。

プールねつ

目の充血や痛みが発生する

「アデノウイルス」の感染で発症。主な症状は「高熱」「喉の痛み(咽頭炎いんとうえん扁桃腺炎へんとうせんえん」「目が赤くなる(結膜炎けつまくえん」。感染力が非常に強く、通俗名の由来となっているプール以外でも飛沫感染や接触感染で広がり、通年性で(冬期も)認める。特効薬はなく症状を和らげる治療のみ。1週間以上高熱が続いた場合、入院治療を行うことも。

RSウイルス感染症

1歳未満はとくに注意が必要

「RSウイルス」の感染による呼吸器系の病気。「発熱」「鼻水」「せき」が特徴。2歳までにほぼ100%が感染する。喘鳴ぜんめいをともなう症状が出た場合はぜんそくに準じた治療を行う。多くは軽症だが、1歳未満(特に新生児)では重症化しやすく、呼吸状態が悪ければ直ちに入院治療となる。同じような症状が見られるヒト・メタニューモウイルスも注意が必要。

手足口病てあしくちびょう

手と足、口の中に発疹が現れる

ヘルパンギーナと同様に「エンテロウイルス」を主な感染源とする夏風邪。「発熱」から始まり、「手のひらや足の裏の発疹」、「口内の水疱すいほう」ができるのが特徴。特効薬はなく症状を和らげる治療のみ。ほとんどが1週間程度で自然治癒する

発熱したからといってあわてず、全身の症状をよく観察してからかかりつけ医に連絡して

今回ピックアップした感染症のほとんどは、特別な治療法はなく、安静にしていれば自然治癒します。ただ、発熱をともなうものが多いため、新型コロナを疑うお母さんも多いかもしれませんね。
暑さで体温が高くなることもあるので、涼しい場所で再度ゆっくり検温してみてください。たとえ高熱でも本人がつらそうでなければ、すぐに解熱剤を使う必要はありません。脇や頭を冷やして少し様子をみましょう。高熱に加えて他の症状があり、体力が落ちそうであれば、解熱剤を使っても良いでしょう。

肝心なのは、熱が高いからといって、あわてないこと。他にどんな症状があるかをしっかりと観察しましょう。たとえば、目が充血していれば「プール熱」、ぜんそくのようにゼーゼーしていたら「RSウイルス」の可能性があります。診察の際にその症状をしっかり伝えることが、適切な診断につながります。

なお、診断には「迅速診断キット」があり、多くのお医者さんが補助的に利用しています。上記のアデノウイルス、RSウイルス、ヒト・メタニューモウイルスには迅速診断キットがありますが、エンテロウイルスにはありません。注意していただきたいのは、検査結果が全てではないので、その結果のみに振り回されないようにしてください。

小児科

金沢医療センター

太田 和秀 先生

富山医科薬科大学卒業後、金沢大学附属病院小児科を経て、現在は同センター教育研修部長、感染管理部長、小児科部長を兼任。