【特別編】正しく知って備えよう! 「新型コロナウイルス」と「ワクチン」

新型コロナの基礎知識

子どもは感染しても比較的軽症。感染源はほぼ大人

いまだ世界中で猛威をふるう新型コロナウイルス。最近では、変異株(デルタ株など)による感染力の増強が問題となっています。当初よりも2〜3倍の感染力の高さが指摘されていますので、今まで以上に感染予防対策の徹底が望まれます。現在、頼みの綱は、全国民へのワクチン接種の徹底による拡散防止です。なお、乳幼児はたとえ感染しても軽症で済むようであり、これがせめてもの救いでしょう。また、子ども同士でうつし合うことは少なく、ほとんどが家庭、幼稚園、保育園、学校における大人たちからの感染がメインです。子どもたちに感染させるのは、我々大人であることをしっかり認識していただきたいと思います。

飛沫感染予防は、お互いにマスクを着用して1.5〜2mほどの間隔(ソーシャル・ディスタンス)を置くことが大切。接触感染予防は、こまめな手洗いや環境整備が重要なポイントです。机上や手すりなどをアルコールなどで拭いて消毒しましょう。一部、空気感染的な要素(エアロゾル感染)もあるといわれ、こまめな室内空気の入れ替えも効果的。さらに、密閉空間、密集場所、密接を避け、不要不急の外出を控えることを心掛けてください。なお、2歳未満や障害があるお子さんのマスク着用は、自ら息苦しさや体調不良を訴えることが難しく、自分でマスクを外すことも困難な場合がありますので、マスク着用をなるべく避けるといった注意も必要です。

ワクチンの基礎知識

新しく開発されたワクチンの接種が日本でも進んでいます。皆さんもご存知のように、日本では「ファイザー社」「モデルナ社」のmRNAワクチン、「アストラゼナ社」のウイルスベクターワクチンが承認され、使用されています。インフルエンザワクチンに比べると副作用の面で接種部位の疼痛が強かったり、接種後の発熱が多かったりしますが、重とくな副作用の出現率には大きな差は認められません。逆に感染(発症)予防効果はかなり高く、感染拡大防止に期待がかかります。最近、変異株(特にデルタ株)に対して効果が薄れてきているのでは、という懸念も出てきていますが、それでも従来のインフルエンザワクチン以上の効果はあるようです。

ワクチンとは

ウイルスの一部を含んだ薬をワクチンといいます。ワクチンを接種すると身体は敵が侵入したと認識し、その敵と戦うべき活動を始めます。この活動を「免疫反応」と呼んでいます。免疫反応が一度起こると、一定期間、その情報が体内で維持されて新たな感染を予防したり、たとえ感染しても重症化しないようにしてくれます。一般の方々は、感染そのものを予防すると信じているようですが、ワクチンを接種しても感染することはあります。また、感染すると大なり小なり周囲にうつす可能性もあります。よって、ワクチンを接種しても感染予防対策を怠ってはいけません。ここが重要なポイントです。

個人免疫と集団免疫

ワクチン接種によって個々の発症が抑えられたり、重症化が抑えられたりします。これを「個人免疫」といいます。また、多くの人たちがワクチンを接種して感染爆発を抑えることで、何らかの理由でワクチンが接種出来ない人たちを守ることを「集団免疫」といいます(図参照)。現在は残念ながら12歳未満のお子さんたちはワクチンの対象になっていません。よって、周囲の大人たちがワクチン接種を受け(集団免疫)、さらに感染予防の徹底などで子どもたちをこのウイルスから守ることが重要となってきます。

集団免疫の図

三菱総合研究所HPより

ワクチンのリスク、ベネフィットを理解する

どんなタイプのワクチンであっても、体内に異物を入れる以上、副反応のリスクはゼロにはなりません。従って、副反応という直近で起こりえるリスクと、ワクチンを接種することによって得られるベネフィットの両方を考えることが重要です。ワクチンの有害事象はいろいろと報告されていますが、本当に因果関係があった上で致死的な経過をたどった例は、極めて少ないといえます。おそらくCOVID-19に罹患したほうが、後遺症も死亡数も多いものと判断できます。このように、ワクチンの知識を正しく理解した上で接種することをお勧めします。詳しくは、厚生労働省の 「新型コロナウイルスワクチン Q&A」 ※のサイトをご覧下さい。

※厚生労働省サイト「新型コロナワクチンについて

最後に、熱などの症状があったら、無理せず仕事や登園・登校を控えてください。人から感染しないこと、そして人に感染させないこと、「うつらない!うつさない」が大切です。この基本的な感染対策は、たとえワクチン接種が広まったとしても続けなければいけない大切な行動パターンです。ワクチン接種も感染対策も誰のために行うのか、誰を守りたいのか、みんなでよく考えましょう。

新型コロナを正しく知って感染対策すれば、不安を減らすことができます。ワクチンについても理解を深め、接種を冷静に判断しましょう。

太田 和秀先生

小児科

金沢医療センター

太田 和秀先生

富山医科薬科大学卒業後、金沢大学附属病院小児科を経て、現在は同センター教育研修部長に感染管理室長、小児科部長を兼任。