【産科婦人科】産前・産後の尿漏れ

Qなぜ妊娠中や出産後に尿漏れは起きるのですか?

A原因は子宮の圧迫や骨盤底筋群の緩みです。

 妊娠に伴う体の変化で、膀胱や子宮を支えている骨盤底筋(こつばんていきん)が緩んだり尿道を支える組織が弱くなったりしますが、さらに妊娠7〜8カ月になると、胎児の成長とともに子宮が大きくなって膀胱を圧迫するために、おなかに力が入ったときや、赤ちゃんの動きで膀胱が刺激されたときに、尿漏れが起こりやすくなります。産後は、妊娠中に緩んだ骨盤底筋が分娩時にダメージを受けて伸びて弱くなるため、さらに尿漏れが起きやすくなると言われています。特に、出産が難産だったり、吸引や鉗子(かんし)による分娩、ベビーが3500g以上のときなどは、骨盤底筋がダメージを受けやすくなります。

Q妊娠中や出産後は何に気をつければいいですか?

A骨盤底筋訓練法で骨盤底の筋力の強化を。

 妊娠中から骨盤底筋訓練法を行うことにより、骨盤底筋群の収縮力を高めることができますし、トコちゃんベルト(骨盤輪を支持するための骨盤ケア用品)などで骨盤底筋をサポートすると予防効果があります。出産後、妊娠で緩み出産でダメージを受けた骨盤底は、安静にすることで産後1〜2カ月にはほとんど回復します。出産後3週間は、できるだけ横になって休み、重い荷物などは持たないようにしましょう。また、腹圧のかかる腹筋体操は骨盤底に負担がかかるので控えた方が良いですし、出産後すぐにコルセットやガードルでおなかを締め付けるのも止めましょう。この時期に無理をすると、中高年になって腹圧性尿失禁が現れることがあるので注意が必要です。治療には、パッドなどで尿漏れを対処する方法、骨盤底筋訓練で骨盤底の筋力を強化する方法、漢方薬での薬物療法、手術療法などがあります。恥ずかしさから相談しづらい、また、そのうち治るからと考えずに、かかりつけの産科にぜひ相談してください。

「症状に合った正しい治療法や対処法をお伝えできますので、一人で悩まずにぜひ診察へ来てくださいね。」

川北 寛志先生

産科婦人科

川北レイクサイドクリニック

川北 寛志先生

金沢大学医学部産科婦人科学教室入局後、様々な病院を経て、現クリニック開院。日本産科婦人科学会認定医。日本東洋医学会専門医。