【特別編】正しく知って備えよう! 「感染症」と「新型コロナウイルス」

知っておきたい① 感染症の基礎知識

3つの感染経路を断ち切る

感染症とは、病原体(細菌やウイルス)が体に侵入して、症状が出る病気のことです。病原体が体に侵入しても症状が現れる場合と現れない場合があり、感染症になるかどうかは、病原体の感染力と体の抵抗力とのバランスで決まります。つまり、体の抵抗力が落ち込むと発症しやすいともいえます。

感染経路には、昆虫や動物などの人以外からうつる経路と、人からうつる経路があり、後者には「接触感染」「飛沫感染」「空気感染」の3つがあります。

接触感染…感染源(人や物)に直接接触して感染。病原体が付着した環境表面(机、ドアノブ、手すり)。〈病例〉とびひ(膿汁)、胃腸炎(吐物、下痢便)。

飛沫感染…咳やクシャミで飛び散ったしぶき(飛沫)を直接吸い込んで感染。〈病例〉風邪、インフルエンザ。

空気感染…空気中を漂う微細な粒子(飛沫核)を吸い込むことで感染。〈病例〉麻疹(はしか)、水痘(みずぼうそう)。

これらの経路を断ち切ることが予防につながります。

ワクチンがなければ、手洗いとマスク

ワクチンがある感染症はワクチン接種で免疫をつけて予防できますが、ない感染症には様々な対策が必要になってきます。特に重要なのが「手洗い」です。感染者のクシャミや咳で飛び散った病原体は、数時間〜数日間、環境表面に生存します。その表面を触った手で顔(目、鼻、口)を触ったり、飲食したりして感染することが多いためです。

小さなお子さんの場合は、楽しく手洗いできるよう、手洗い練習スタンプなどを利用してもよいでしょう。保護者の方は、家のドアノブや手すり、遊具などの表面に付着した病原体を定期的に拭き取るなどして消毒してあげてください。

咳やくしゃみのある子には咳エチケットとしてマスクの装着をおすすめします。病原体を飛び散らさないよう、お互いにマスクを装着することで強力な感染予防につながります。人気のキャラクターが描かれたマスクを使用するなど、親子で楽しくマスク装着の習慣をつけましょう。なお、2歳未満のお子さんや、マスク着用にて誤嚥や窒息の危険性があるような障がいなどがあるお子さんは、自ら息苦しさや体調不良を訴えることが難しく、自分でマスクを外すことも困難です。その結果、マスクによる窒息や熱中症などの危険性が考えられます。このようなお子さんのマスクの常用は避けるべきです。しかし家族以外の人との濃厚接触時には、一時的にマスクを装着させることは重要です。

体力が落ちていると感染症を発症しやすくなるので、発症防止のために身体機能を高めることも大切。バランスのとれた食事、 十分な睡眠や休息といった規則正しい生活習慣がお子さんに身に付くように心がけましょう。

知っておきたい② 新型コロナウィルス

子どもは感染しても比較的軽症

新型コロナウイルスは、感冒の原因となるウイルスのひとつ、ベータ・コロナウイルス属の中の「新種」です。2019年末に中国・武漢から始まり全世界に拡大したように、強力な感染力を持っています。さらに生命を脅かすほどの重症肺炎を起こすため、”SARS-CoV-2″※1と呼ばれています。

診断検査(抗原検査、PCR検査等)は増えたとはいえ、未だ十分とは言えません。また効果的な治療法も確立されていないため、世界中で恐れられています。しかし、小さなお子さんたちはたとえ感染しても軽症で済むようであり、これがせめてもの救いでしょう。現在、頼みの綱は”ワクチン開発”による拡散防止です。

※1)”SARS-CoV-2″によって引き起こされた病態を”COVID-19″といいます。

マスク、手洗い、3密回避が重要

飛沫感染予防には、お互いにマスクを着用して1.5〜2m ほどの間隔(ソーシャル・ディスタンス)を置くことが大切といわれています。一方、接触感染予防には、こまめな手洗いや環境整備が重要なポイントです。新型コロナウイルスは、机上や手すりなどの表面で最長3日間生きるともいわれます。環境整備は、0.05%の次亜塩素酸ナトリウム(薄めた漂白剤)で拭いた後、水拭きするか、アルコールで拭きましょう。一部、空気感染的な要素もあるといわれ、こまめな室内空気の入れ替えも効果的です。

今やるべきは、換気の悪い”密”閉空間、多数が集まる”密”集場所、間近で会話・発声する”密”接場所いわゆる「3つの”密”」を避け、不要不急の外出を避けること。また、感染経路別対策として、マスクの着用、ソーシャル・ディスタンスの保持、さらに手洗いや環境表面の消毒、室内の空気の入れ替えをこまめに実行しましょう。

期待される新ワクチン

世界では、新しく開発されたワクチンの接種が開始され、日本でも今後始まろうとしています。インフルエンザワクチンに比べると副作用の面で接種部位の疼痛が強かったり、接種後の発熱が多かったりしますが、重篤な副作用の出現率には大きな差は認められません。逆に感染(発症)予防効果はかなり高く、感染拡大防止に期待がかかります。

残念ながら、いろんな理由で16歳未満のお子さんは対象になっておりません。しかし、周囲の大人たちがワクチン接種や感染予防の徹底などで子どもたちやお年寄りをこのウイルスから守ることが重要です。ワクチンの知識を正しく理解した上で接種することをお勧めします。詳しくは、厚生労働省の「新型コロナウイルスワクチンについて」のHP※2をご覧下さい。

最後に、熱などの症状があったら、無理せず仕事や登園・登校を控えてください。人から感染しないこと、そして人に感染させない、「うつらない!うつさない!!」が大切です。

※2)厚生労働省サイト「新型コロナワクチンについて

身の回りの細菌やウイルスを正しく知って感染対策すれば、不安を減らすことができます。まもなく始まる新型コロナワクチン接種についても理解しておきましょう。

太田 和秀先生

小児科

金沢医療センター

太田 和秀先生

富山医科薬科大学卒業後、金沢大学附属病院小児科を経て、現在は同センター教育研修部長に感染管理室長、小児科部長を兼任。