みんなちがって、みんないい

全国各地で、このフレーズが使われているようですが、元々は童謡詩人・金子みすゞさんの詩の一節です。
今回は優しさにあふれた、この詩を紹介します。
金子みすゞさんの詩は、私の人生のバイブルです。

私と小鳥と鈴と

私が両手をひろげても、
お空はちっとも飛べないが、
飛べる小鳥は私のように、
地面を速くは走れない。

私がからだをゆすっても、
きれいな音は出ないけど、
あの鳴る鈴は私のように、
たくさんな唄は知らないよ。

鈴と、小鳥と、それから私、
みんなちがって、みんないい。

『金子みすゞ童謡全集』(JULA出版局)より

近年は目で見えることばかりが重要視され、目には見えない部分が軽視されることが、とても多くなってきているように感じます。四季折々の風の匂い、人を思う心・うれしさ・悲しさ・喜び…など目には見えません。目に見えない心の奥の優しさをどこまでも深く、金子みすゞさんは、この短い言葉の中で表現しています。金子みすゞさんの詩に出会い、私は保育者としての心の原点を知らされました。それからは何か不測の事態が生じ、心が汚れそうになると、必ずみすゞさんの詩を読みます。

「私」 と 「小鳥」 と 「鈴」。それらは最初から異なるもの同士です。私はそれらを、子どもの個性や育ちと重ねてしまいます。

子どもが100人いれば100人の個性と育ちがあります。AちゃんができることがBちゃんにはできない。反対にAちゃんができないことがBちゃんにはできる…。そんなふうに、それぞれ得意なことや役割があり、お互いが認め合ったり、思いやったりするということで子どもたちの関係は成り立っています。

『私と小鳥と鈴と』。伝えようとしている本当の意味は言葉通りに違うから認め合う、という意味ではないと考えます。もっと奥深くて、お互いが違うから、お互い大切なんだね、と言っていると思うのです。「みんなちがって、みんないい。」 の 「いい」という言葉は、「違うからこそ大切なんだね」 という意味だと考えます。

心の中の思いを短い言葉で、こんなに深く素晴らしく表現できる詩人、金子みすゞさん。

最後にもう一度、私の人生のバイブルです。