【最後に】タイムリーに相談や対応ができるネットワーク、人と人とが思いやれるつながりを…

最終回に寄せて

「“さとぱんまん” にまかせなさい」のコーナーは今号を持ちまして最終回となります。
“さとぱんまん”こと村中さんに子育て支援に携わるきっかけから20年近くに及ぶ支援者としての経験を経た、今の思いを語ってもらいました。

さとぱんまんからのメッセージ

必要なことは、現実を見つめ、地域資源を活用して、タイムリーに相談や対応ができるネットワーク、人と人とが思いやれるつながりを作ること

夫、両親、近所の人に
救われた子育ての経験から

 「津幡町社会福祉協議会」に勤める前、さとぱんまんはフツーの主婦でした。看護師の経験から「子育てなんて楽勝だ」と思っていたら、1人目から挫折の日々…良い嫁、良い妻、良い母が当たり前の理想像はもろくも崩れ、夜中に「だれかたすけて!」と叫びたくなることが多くなりました。
 専業主婦だから、食べさせてもらっているから、「完璧に家事育児をこなすべき」の世界にはまったとき、ストレスの矛先は愛する息子に向っていました。限界に気づいてくれた夫や両親、近所の人が私を救ってくれ、なんとか4人の子どもたちはすくすくと育ちました。
 でも、私の周囲はそんなラッキーな境遇ではない人が多く、親子ともに地獄のような生活を科せられている人もいました。子どもの顔が能面のようになっていく…誰もが陥るこの不幸に何かできないだろうか、子育て支援を考え始めたのが19年前でした。一主婦が立ち上げた子育て支援サークルは当時珍しく、瞬く間に評判になり、さまざまな家族と関わるようになりました。

家族や地域のしくみを変えて
思いやりのネットワークを

 「親子サロン」の相談員になってからは、さらに地獄のような生き方をしている家族にこれでもかというほど会ってきました。誰も虐待をしたいわけじゃない。子どもが将来自分のように苦労しないよう困らないようしつけているだけなのに、上手く回らない現実に精神を病んでしまった人も少なくありませんでした。
 誰かがそばにいて話を聞いてくれるだけでいい、否定しないで助けてほしい、同じ境遇の人たちがどのようにクリアしているのか知りたい…そんな相談から生まれたさまざまな会(子どもをみ送った親の会、発達障害児の親の会、不登校の親の会、完璧な親はいないプログラムの各会など)が今でも継続しています。
 否定非難は何も生まない。なぜ虐待が起こるのか、子どもが不登校になるのか、揉め事がおこるのか…誰かが悪いわけじゃない。良かれと思って、またはどうしようもできなくてしていること。悪者探しをするのではなく、家族や地域のしくみが変化していけばいいだけのこと。サザエさんのような家庭が当たり前な時代は過去のこと。もっと現実を見つめることで、いろんな地域資源が見えてきます。
 子どもの世界も高齢者の世界のように包括支援が進むよう、厚生労働省が掲げる「我が事、丸ごと」の実現のため、新たなフィールドで、活動していきます。
 短い間でしたが楽しかった〜!ありがとうございました。

今回の回答者

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津幡町社会福祉協議会
子育てたまり場親子サロン親子支援センター長

村中 智恵さん

3男1女の母。元看護師。子育て中に多くのママから「家庭崩壊」も起こりうる悲痛な叫びを聞き、地域協働での母親支援に取り組むことに。石川県における子育て支援、母親支援の第一人者。