私の子育て支援 vol.5(p34)

2015年12月25日

今、辛くても未来はきっと笑顔に


明るく開放的な空間の金沢21世紀美術館内の託児ルーム。丁寧な託児からリピーターが多いのが特徴です。

専業主婦から
ママを支援する立場に

 専業主婦だった布施さんは、当時小学校6年生の息子を病気で失い、その現実を受け入れらず、ふさぎ込む毎日が続きました。約10年の月日を経て、「勉強し直したい」という気持ちが芽生え、通信講座で心理学や哲学を学ぶうちに、「この経験を活かして、子育て支援をしなければ」と意志が固まっていきました。「私は息子に高望みをいっぱいしてきて、それは意味があったのだろうかと思うようになりました。その子は、その子の“本来持っている色”で咲いていればいい。もっと楽に受け止めてあげればよかったんです」。
 自らの反省から生まれたメッセージを伝えたいという気持ちと、自分が上手く子育てできなかった不甲斐なさが前に進む力となり、県の「保育ママ」養成研修を受講。次第に目指す支援のイメージが見えてきました。
 その一歩を踏み出す弾みになったのが、2008年大阪のマンションで幼児二人が放置され、死亡するという事件。周囲から孤立していたママの心情を察し、「地域の中に入り込み、行政では行き届かない部分をサポートしていきたい」と仲間と「NPO子育て支援さくらっこ」を立ち上げました。

子どもやママ、スタッフの
未来につながる活動を

 その後、子育てサロン、金沢21世紀美術館内の託児ルームの運営などの支援活動をスタート。2011年には法人格を取得しました。託児ルームには、美術館客のほか、通院やリフレッシュのために預けるなどさまざまなママが訪れます。
 「子育ては慌ただしく、辛い時もあるけれど、振り返れば、そんな期間は一瞬。生きていてこその素晴らしい経験なのです。だから、気負わずに、うまく乗り越えてほしいですね。そして、その時間がママの糧になると思います」。
 「さくらっこ」の託児は「丁寧さ」に定評があり、スタッフは、ママと子どもと心の距離を縮めて、きちんと向き合っています。そこには「みんなが輝いていてほしい」という布施さんの願いが込められています。
 さらに新たな目標も掲げています。スタッフの中には、子育てをしながらの社会復帰が難しかった人、介護を抱えている人などもいて、そんな人たちの「活動の場、生きがい創出の場」を確保すること。「各世代の特徴や、個々の長所を活かして、スタッフ一人ひとりがスキルアップできる活動を探っていきたいですね」。
 子育てを支援しながら、スタッフの未来も支援。自らも辛い経験を乗り越えてきた布施さんの言葉は温かく、多くの人を笑顔にします。

NPO法人子育て支援さくらっこ

金沢21世紀美術館内で託児室を運営。2015年11月20日に金沢市が駅西地区に開設した託児室の運営も委託される。そのほか、「とむろキッズの森リユース市」、地域へ出向く「子育て出前サロン」なども行っている。
●問い合わせ●076-220-2815(金沢21世紀美術館内)

布施 安子さん

NPO法人子育て支援さくらっこ 理事長

布施 安子さん

地域での子育て支援に興味をもち、専業主婦から転進。石川県の「保育ママ」養成研修を受講。2008年に「NPO子育て支援さくらっこ」を立ち上げる。翌年「NPO法人ボランティアサービス石川」に加入し、子育て支援部門を担い、子育てサロン事業、金沢21世紀美術館託児ルーム運営などの事業を受託。2011年にNPO法人化し活動の幅を広げ、自主事業も展開。