NPO法人いしかわ多胎ネット 山岸 和美さん

多胎育児への理解とつながりを深めたい


9月に白山市内で行われたプレ多胎ファミリー教室。パパとママに分かれて話し合う場では「悩みや不安が2倍なら、喜びも2倍」と先輩パパの声も聞かれました。

双子をもつママ同士が
気兼ねなく集える場所を

 山岸さん自身も、男女の双子の子育てに奮闘してきました。「子どもたちが小さいころ、、よく児童館などへ遊びに行きましたが、1人で2人を見なければならないので、他のママとゆっくり話もできませんでしたね」。そこで、近所にもう一人いた双子のママと一緒に、同じ境遇のママたちが集えるサークルを立ち上げることにしました。お子さんが2歳のときです。「サークルは“支援”というより、同じ苦労をしている仲間と話せる“居心地の良い場所に集う”という感覚でした」。
 また、同じころ、助産師の仕事として、行政から双子の新生児訪問も託されるようになったことで、本格的に、山岸さんの多胎育児支援が始まりました。

多胎妊娠・多胎育児
特有の不安や悩み

 「多胎児の妊娠期は母子共にリスクが高いんですが、ある妊婦訪問先で、お姑さんが『安産のために、積極的に体を動かしなさい』とアドバイスしているのを聞きました。そこで、単胎と多胎の妊婦さんの違いを説明したら、理解してもらえて、無理をしないよう配慮してもらえるようになりました。その方は、早産にもならず、立派な双子ちゃんを出産されました」。
 さらに多胎児の育児は、周囲に同じ経験をしたママが少ない、出産した途端に2~3人の育児がスタートする、発達や発育を比べて不安が増すなど、単胎児の育児とは違うところがたくさんあると言います。
 「当面の目標は、多胎妊娠中のご家族に、多胎育児について知ってもらうこと。実際に経験した先輩家族との交流を通して、妊娠中から心構えを持っておくことで戸惑うことも少なく、困ったときにもSOSを出しやすくなりますから」。

支援の広がりを実感
今後はさらに奥能登へも

 石川県内では、10年前に、多胎育児を研究する大学教授や多胎児サークルの代表が中心になって、多胎家庭を支援する『NPO法人いしかわ多胎ネット』が発足し、支援拠点も増えてきました。ただ、奥能登地域は保健師が個別に支援しているものの、多胎家庭が少ないため、交流の場を設けにくい現状があります。奥能登の多胎家庭ともっと交流を深めたいと山岸さんは願っています。
 「多胎ファミリーには、大変なことも多いですが、多胎ならではの楽しみやかわいさ、喜びもたくさんあることを知って、前向きに子育てしてほしいですね。また、多胎児もどのような人も分け隔てなく暮らしていける社会になればいいなあと思います」。 

NPO法人いしかわ多胎ネット

先輩ママが家庭を訪問する「先輩ママ訪問(ピアサポート)」をはじめ「多胎ファミリーお泊り会」、「ツインズデーに乾杯」など多胎児ファミリー同士の交流イベントやプレ多胎ファミリーを対象にした教室や広場を開催。今年結成10周年。

山岸 和美さん

山岸 和美さん

1997年に同じ双子を持つママと双子サークル「ほっとらんど」を立ち上げ、
その縁で2005年、NPO法人いしかわ多胎ネットに加入、2013年度から代表に。
助産師。男女の双子の母。